所在地 : 沖縄県国頭郡恩納村字安富祖金良原 1712 (→Mapion)
訪問日 : 2003-09-08
URL : http://www.jaxa.jp/about/centers/tracking/otcs/index_j.html
注) 2003 (平成 15) 年 10 月 1 日の「宇宙航空研究開発機構」(JAXA : Japan Aerospace Exploration Agency) 発足に伴い、現在は「宇宙航空研究開発機構 沖縄宇宙通信所」です。
2003 年 9 月、現地二泊三日の沖縄訪問の最終日、筆者はレンタカーを駆って嘉手納基地や楚辺通信所を訪れたのですが、移動の効率を考えたためとは言え、嘉手納や読谷に行く程度でクルマを借りるのもコストパフォーマンスがよろしくない、さりとて更に足を伸ばそうにも飛行機の時間の関係上あまり遠出も叶いません。どこか程よい距離のところで興味深い史跡か施設でもないものかと地図を眺めていたら、恩納村に宇宙開発事業団 (NASDA、現・宇宙航空研究開発機構) の通信所があるのを見つけました。
沖縄の道路事情なぞサッパリ分かりませんが、沖縄自動車道を使えば 1 時間半程度で那覇空港に戻れるだろうと踏み、ドライブがてら訪れてまいりました (座喜味城址とか残波岬とか万座毛とか他にも見どころはあるだろ、と言う意見はこの際無視します)。
日本にある宇宙関連施設としては種子島宇宙センターが有名ですが、打ち上げ後のロケットや人工衛星を追跡・管制する施設の存在も忘れてはいけません。
人工衛星が種子島から H-IIA ロケットで打ち上げられた後、衛星から発信された電波は、地上の通信所で受信した後に筑波宇宙センター内の追跡管制室に送られます。これにより、衛星の軌道や姿勢が正しいか、搭載された電子機器等が正しく動作しているかを 24 時間体制で監視、状況に応じて姿勢制御等の指令信号を衛星に送信して、衛星の運用維持に努めています。
人工衛星との電波回線を確保するための地球局のひとつとして、沖縄本島中央部に設けられているのが沖縄宇宙通信所 (OTCS : Okinawa Tracking and Communication Station) です。1968 年 2 月、科学技術庁 (現・文部科学省) 宇宙開発推進本部の「沖縄電波追跡所」として発足し、1969 年 10 月の宇宙開発事業団設立に伴い NASDA の施設に編入されました。現在の「沖縄宇宙通信所」の名称は 1997 年 4 月の組織改正によるものです。
旧 NASDA の同様の通信所は国内には OTCS の他、増田宇宙通信所 (種子島)、勝浦宇宙通信所 (千葉県) があります (この他、打ち上げ後のロケットの追跡を行う施設として小笠原追跡所 (父島) があります)。
JAXA 発足後は、旧宇宙科学研究所 (ISAS) の内之浦宇宙空間観測所と臼田宇宙空間観測所も追跡ネットワークに加えられました。
国道 58 号線を名護方面へ北上し、恩納村安富祖で金武町方面へ右折して県道 104 号線に入り、200m 程のところで左折して農道へ入ります……と言うか、大きな案内標識が出ているので、標識に従って車を走らせれば迷うことは無いと思います。筆者の運転で読谷から 40 分程でしたから、那覇からは 2 時間弱のドライブとなりましょうか。
ドライブがてら立ち寄るのに丁度良いスポットと考えるのは私だけでは無いらしく、平日ながら筆者の他にもレンタカーの姿がちらほらと見受けられました。
追跡管制棟内には小規模ながら展示室が併設されており、10:00 〜 17:00 の間、年中無休で無料公開されています (この手の業務施設の公開現場ではよくあることですが、受付で住所・氏名等の記帳を求められます)。
無論、ある程度以上の規模の団体 (社会科見学とか修学旅行とか) での見学の際は事前に連絡・予約を入れるのが筋と言うものです。
ちなみに、帰路は県道 104 号線を金武町へ抜けて金武 IC から沖縄道に乗ったのですが、金武町側からのルートはメジャーでないらしく、案内標識の類を確認できませんでした。往きに沖縄道を利用するなら、屋嘉 IC で降りて屋嘉トンネル経由で国道 58 号線に出るのが無難かも知れません。
沖縄宇宙通信所正門にて。シーサーやいびーん。
(2003-09-08)
追跡管制棟。この 1F に展示室がある。
(2003-09-08)
第 1 展示室。様々な人工衛星の役割や、静止軌道・極軌道等の衛星軌道の違いといった、人工衛星に関する基礎知識の解説がメイン。
(2003-09-08)
第 2 展示室より、実験用中型放送衛星「ゆり」のエンジニアリングモデル。
人工衛星を製作する際、打ち上げる実機と全く同じ物を動作確認のためにもう 1 機作る場合があり、これがその試験機の実物。宇宙にこそ行かなかったものの、本物の人工衛星というわけ。
「ゆり」実機は 1978 (昭和 53) 年 4 月 8 日 (日本時間)、アメリカのデルタロケットによってケネディ宇宙センターより打ち上げられた。
(2003-09-08)
廊下と言うな、第 3 展示室と呼べ (笑)。
NASDA の打ち上げた人工衛星と打ち上げに使用したロケットの写真が多数展示されている。
主力ロケット H-IIA の解説記事もあり、技術ネタをお望みならこちらへ。
(2003-09-08)
実際の衛星管制現場、運用機械室をガラス越しに見ることができる。監視スケジュールの合間だったのか、特に慌しくオペレーションしている様子は見られなかったが。
写真ではよく判らないが、モニタにパラボラアンテナ各基が映し出されている。
(2003-09-08)
追跡管制棟の目の前にある、静止衛星用パラボラアンテナ。周囲は駐車場で「ここまで近付けて本当にいいのか?」と余計な心配をしてしまうくらい間近に接近できる。デカい、そして美しい。
直径 30m、旧 NASDA の衛星追跡アンテナとしては最大のもの。
(2003-09-08)
追跡管制棟から少し離れた位置にある、周回衛星用アンテナ。静止衛星用のものよりは小ぶりだが、それでも直径 18m。
写真からも判るように、仰角調整機構が 2 つ直交する「X-Y マウント」と呼ばれる構造をしており、これにより 3 次元的にアンテナの向きを変えられる。
(2003-09-08)
2002 年 6 月に運用を開始した、沖縄第 1 可搬局アンテナ (直径 10m)。OTCS の運用系統下ではなく、筑波宇宙センターよりリモートコントロール運用されている。
「可搬」と言っても人間の手で持ち歩けるわけではもちろん無く、必要に応じて容易に移設が可能という意。
恐らくはパラボラ部も傘のように折り畳む事ができるのであろう、一度見てみたい気もする。
(2003-09-08)
NASDA から JAXA へ。組織が生まれ変わろうとも、衛星管制業務の重要性は微塵も揺るがない。
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