探検発見 : 情報通信研究機構 鹿島宇宙技術センター

所在地 : 茨城県鹿嶋市平井 893-1
訪問日 : 2004-07-31, 2005-07-30
URL : http://www2.nict.go.jp/w/w122/ka/index-j.html


茨城県南部、鹿島アントラーズや鹿島神宮でお馴染みの鹿嶋市は、茨城名物 (?) パラボラアンテナの名所でもあります。

鹿島とパラボラの関係は、1963 (昭和 38) 年 8 月、郵政省 (現・総務省) 電波研究所が直径 30m のアンテナ施設を完成させたことに始まります。
翌 1964 (昭和 39) 年 5 月、電波研究所鹿島支所が開設、同年 10 月には静止通信衛星シンコム 3 号を用いて東京オリンピックのテレビ国際中継に成功しました。世界中の映像が衛星経由でリアルタイムに伝えられる、今日では当たり前となった衛星通信時代の本格的な幕開けです。KDD 茨城宇宙通信実験所 (現・KDDI 茨城衛星通信センター) での日米間テレビ中継実験と共に、日本の衛星通信の黎明期を語るうえで欠かせないエピソードです。
以来、各種技術試験衛星を用いた大容量衛星通信の研究、移動体衛星通信技術の研究、VLBI 等の電波天文観測など、宇宙電波を対象に各種の研究・実験が行われています。

1988 (昭和 63) 年 4 月、郵政省電波研究所は「通信総合研究所」と改称、1989 (平成元) 年 5 月、通総研鹿島支所は平磯支所 (現・平磯太陽観測センター) と統合されて関東支所が発足、それまでの鹿島支所は「鹿島宇宙通信センター」と改称されました。
2001 (平成 13) 年 4 月、通総研が独立行政法人化されると共に「鹿島宇宙通信研究センター」と改称されています。
そして 2004 (平成 16) 年 4 月、通総研は通信・放送機構と統合され、独立行政法人「情報通信研究機構 (NICT : National Institute of Information and Communications Technology)」となりました。
2006 (平成 18) 年 4 月、「鹿島宇宙技術センター」とまたまた改称。組織・施設の名称はコロコロ変遷していますが、最寄りバス停の名はいまだに「鹿島宇宙通信センター」のままだったりします (ちなみに、JR 鹿島神宮駅のバス乗り場にはいまだに「電波研究所」の表記がある)。

鹿島の歴代パラボラの中で特筆すべきは、1968 (昭和 43) 年完成の 26m アンテナです。
1984 (昭和 59) 年から 15 年間にわたり国際 VLBI 観測に供され (1992 (平成 4) 年、国土地理院に所管変更)、世界測地系におけるアンテナ座標が正確に確定していたため、2002 (平成 14) 年 4 月に日本測地系を世界測地系に準拠させる変更を行う際の新しい基準点とされました。
つくば市の国土地理院内に新たな 32m アンテナが完成したため、2003 (平成 15) 年 2 月に惜しまれつつ撤去されましたが、日本の地図の歴史に永久にその名を残すこととなりました。
現在の鹿島にある大型パラボラは、西太平洋電波干渉計として建造された 34m、BS・CS 実験用の 13m 2 基、各種 VLBI 実験用の 11m です。

鹿島宇宙技術センターを訪問されるなら、年に一度開催される一般公開イベントがお勧めです。34m アンテナの上部まで登れるほか、巨大なディッシュが間近で動く姿はパラボラファンならずとも魅了されます。なにぶん年一度のチャンスなので、イベント予定は要チェック。
鹿島への交通機関は、東京駅から出る鹿島神宮行き高速バスが乗り換え無しで便利ですが、宇宙技術センター前を経由しない便もあるのでご注意を。


NICT 鹿島宇宙技術センター鹿島宇宙通信研究センター本館。BS・CS 実験庁舎のアンテナがガラスに反射して写っている。
手前に立つのは、日時計と電波時計。ちなみに、電波時計の校正に用いられている標準電波を送信するのも NICT のお仕事。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センター宇宙通信展示室。通常は 9:00〜16:00 の開館。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センターBS・CS 実験庁舎。右手が CS、左手が BS 用で、屋上のアンテナは共に直径 13m。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センターBS・CS 実験庁舎の前にある「東京オリンピック宇宙中継の地」碑。かつてこの場所にあった 30m アンテナから、シンコム 3 号を介して東京オリンピックは全世界に伝えられた。
鹿島に最初に建造された 30m パラボラは、1975 (昭和 50) 年 5 月に撤去された。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センター1988 (昭和 63) 年完成、所内最大の 34m アンテナ。
パラボラアンテナとしては国内第 3 位の大きさで、測地 VLBI や電波天文等の各種観測・研究に供されている。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センター34m パラボラは一般公開イベント最大の目玉。アンテナ上部の受信機室まで登ることができるほか、毎時一回アンテナを駆動して見せてくれる。普段滅多に見られない、34m ディッシュが真横に向く姿は記念写真の格好の被写体。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センター小金井・鹿島・館山・三浦の 4 ヶ所のアンテナを用いた VLBI によって首都圏の地殻変動を観測する「要石計画 (KSP : Key Stone Project)」 用の 11m アンテナ。
KSP の観測は 2001 年度で終了したが、現在も各種 VLBI 実験で使用されることがある。最近では、宇宙探査機の軌道決定高精度化を目指した実験で、JAXA 内之浦宇宙空間観測所 の 34m アンテナとの間で VLBI 観測に成功している。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センター34m アンテナ上部から BS・CS 実験庁舎および鹿島灘を望む。
(2004-07-31)

NICT 鹿島宇宙技術センターおまけ : 34m アンテナ傍の実験庁舎内で見かけたモノ。やはり研究施設に萌え要素は不可欠?
ついでに、公開イベント時のスタッフの T シャツには鹿島らしく (?) 巫女が描かれていた。こりゃもう見に行くしか (ぉぃ)。
(2004-07-31)