探検発見 : 国土交通省大阪航空局 神戸航空衛星センター

所在地 : 兵庫県神戸市西区井吹台東町 7-6-2
訪問日 : 2004-07-24, 2005-03-05
URL : http://www.kasc.go.jp/


2005 (平成 17) 年 2 月 26 日 18 時 25 分、宇宙航空研究開発機構・種子島宇宙センターから H-IIA ロケット 7 号機が打ち上げられました。
2003 (平成 15) 年 11 月 29 日の 6 号機の失敗以来 1 年 3 ヶ月ぶりとなるフライトで打ち上げられたのは、航空管制ミッションと気象観測ミッションを併せ持つ「運輸多目的衛星新 1 号 (MTSAT-1R)」です。打ち上げ 40 分 02 秒後にロケットから分離、静止トランスファー軌道に投入された MTSAT-1R は、3 月 8 日 10 時 42 分、東経 140 度の静止軌道位置に静止完了しました。
衛星の愛称については、異なるミッションを併せ持つ衛星ゆえにその行方が注目されていましたが、最終的には気象衛星として馴染み深い「ひまわり」の名を継承し「ひまわり 6 号」と命名されました (正式名称は MTSAT-1R のまま)。

MTSAT 自体の管制と、MTSAT を用いた新たな航空管制・保安システムを運用するための地球局施設は、冗長性確保のために本州の東西 2 ヶ所に設けられています。一つは東京航空局管内の「常陸太田航空衛星センター」、もう一つは大阪航空局管内の「神戸航空衛星センター」です。
MTSAT を介して航空機と地上管制機関との間の通信回線を確保し、パイロットと地上管制官との交信を司り、航空機の位置情報を管制機関へ送信、そして GPS 補正情報を航空機に提供することで、より高精度な航空ナビゲーション (MSAS : MTSAT Satellite-based Augmentation System) を可能にします。

神戸航空衛星センターは、MTSAT 打ち上げを前にした 1999 (平成 11) 年 4 月に開所しました。
しかし同年 11 月 15 日、MTSAT-1 を搭載した H-II ロケット 8 号機はメインエンジンのトラブルにより指令破壊、衛星もろとも太平洋へ散りました。代替衛星 MTSAT-1R は、輸出ライセンス取得の遅れや新型気象観測センサーのトラブル、更には製造元 Space Systems/Loral 社の経営破綻により製造・納入に遅延をきたし、その間に H-IIA ロケットはフライトスケジュールに情報収集衛星が割り込んだ挙句に 6 号機が失敗してフライト中断と、日本の宇宙開発の迷走ぶりを反映したような紆余曲折を辿ることとなってしまいました (H-IIA F6 のペイロードが MTSAT-1R でなかったのが不幸中の幸い……などと言うと IGS 2 機を失った内閣府に怒られそうですが)。
当然、衛星が上がらなくては地球局も只のハコモノ、航空衛星センターではシミュレータによる訓練ばかりが続けられてきました。
なにはともあれ、開設から 6 年、ようやく本来の業務が開始されることになります。

神戸市交通局地下鉄西神線・西神南駅で下車後、ハイテクパーク方面へ 20 分程歩くと、3 基のパラボラアンテナが視界に入ります。山の中腹にある常陸太田航空衛星センターとは異なり、普通の工業団地のなかにデーンと構えており周囲との高低差もほとんど無いので、外からパラボラを拝むのも容易です。
もちろん、重要施設ゆえフェンスや監視カメラで厳重に保護されており、不用意に接近して不審者扱いされたとしても当方は一切関知したしません。近くの運動公園辺りから眺める程度が無難かも。

なお、念のため断っておきますが、神戸・常陸太田両センターとも「気象衛星ひまわりの基地局」であることは間違いではありませんが、あくまで「航空衛星センター」であり気象観測業務には関与しません。気象ミッションに携わるのは、埼玉県鳩山町の気象衛星通信所となります。
くれぐれも、神戸や常陸太田のパラボラを指して「あのアンテナで雲の写真を受信するのだ」などと恥ずかしい間違いを犯さぬようご注意あれ。


神戸航空衛星センター神戸航空衛星センター。直径 13m のパラボラが 3 基並ぶ。
左端は 2006 年 2 月 18 日に打ち上げられた MTSAT-2 用、中央が MTSAT-1R 用。右端は、レンジング・テレメトリング・コマンド送信といった衛星追跡管制用の共通 S バンド (USB : Unified S-Band) アンテナ。
(2005-03-05)

神戸航空衛星センター右端の 1 基。開設当初に MTSAT-1 用として設置されたもので、建造時期の違いのためか基部の形状や副鏡ステーの数が他の 2 基と異なる。
(2005-03-05)

神戸航空衛星センター中央の 1 基 (左端の 1 基も同型)。常陸太田と同型の 13m カセグレン。
(2005-03-05)

神戸航空衛星センター運動公園から見るとこんな感じ。手前の貯水池と合わせ、結構な画になります。
(2005-03-05)

参考文献

大阪航空局ホームページ
国土交通省 大阪航空局 , <http://www.ocab.mlit.go.jp/>
日本の航空管制 新時代へ
「月刊エアライン」2005 年 7 月号, イカロス出版, 2005