探検発見 : 情報通信研究機構 平磯太陽観測センター

所在地 : 茨城県ひたちなか市磯崎町 3601
訪問日 : 2004-07-31, 2005-07-30
URL : http://sunbase.nict.go.jp/home-j.html


JR 常磐線勝田駅から茨城交通湊線の気動車に揺られること 20 分、平磯を過ぎて海岸段丘上を走る車窓右側に、少々小振りなパラボラアンテナの姿が見えます。さすがは「パラボラ銀座」茨城。
衛星通信用アンテナと思われるかも知れませんがさにあらず、情報通信研究機構 (NICT) 平磯太陽観測センターの電波望遠鏡です。

平磯太陽観測センターの前身は、1915 (大正 4) 年 1 月に発足した逓信省電気試験場平磯出張所です。
戦後は郵政省電波研究所 (後の通信総合研究所) の所管となり、平磯電波観測所 (〜1966)、平磯支所 (1966〜1989)、平磯宇宙環境センター (1989〜2001) を経て、2001 (平成 13) 年 4 月に通信総合研究所が独立行政法人化されると共に現在の「平磯太陽観測センター」の名称となりました (2004 (平成 16) 年 4 月、通総研は通信・放送機構と合併改組し「情報通信研究機構」となる)。
歴史的経緯を見ても分かるように母体は無線通信研究機関であり、太陽観測とのつながりにピンと来ない向きがあるかも知れませんが、太陽活動と電波通信との間には切っても切れない関係があります。

太陽の活動が活発なとき、黒点付近の表層部で爆発現象 (フレア) が発生することがあり、このとき大量の電磁波や X 線、荷電粒子が放出されます。これが地球に到達すると、電離層擾乱のために短波通信が途絶 (デリンジャー現象) したり、人工衛星が軌道上で不具合を起こす (最悪の場合、機能喪失に至る) ことがあります。
近年では、2002 (平成 14) 年 4 月に起きた観測史上最大規模の太陽フレアにより、日本の火星探査機「のぞみ」の電源系が故障、関係者の必死の努力も空しくついに火星周回軌道投入を断念する事態となったのは記憶に新しいところです。
今日、太陽活動を観測し宇宙環境を知ることは、無線通信や宇宙開発に不可欠な要素なのです。

平磯では、電離層観測とともに、電波伝搬に影響を与える太陽黒点観測、地磁気観測を定常的に実施し、国際的な宇宙環境監視網の一員として宇宙環境情報の提供を行っています。平磯での観測データと国内外の観測網から寄せられるデータを分析して得られた「宇宙天気予報」は、関係機関や一般ユーザへ準リアルタイムで提供されます。

NICT 平磯太陽観測センターへは、平磯駅よりも磯崎駅の方が近いのでお間違えの無いように。下車支度はパラボラが見えてからでよろしい。磯崎から徒歩約 15 分也。
鹿島臨海鉄道経由で、鹿島宇宙技術センターとのハシゴでパラボラ巡りというのも面白いかも。


NICT 平磯太陽観測センター平磯太陽観測センター、"HiRAS" (Hiraiso Radio Spectrograph) と呼ばれる太陽電波観測システムの電波望遠鏡。10m、6m、2m のパラボラが太陽を狙う。
(2004-07-31)

NICT 平磯太陽観測センター70〜500MHz 帯の太陽電波を観測する 10m アンテナ。右後方には、25〜70MHz 帯を観測するログペリアンテナが見える。
(2004-07-31)

NICT 平磯太陽観測センター左は 500〜2500MHz 帯を観測する 6m アンテナ。右の 2m アンテナは 2800MHz の固定周波数用で、太陽電波の絶対強度を観測する。
(2004-07-31)

NICT 平磯太陽観測センター太陽電波観測のため、当然パラボラも太陽を追尾して向きを変える。さながら「電子の向日葵」。
(2004-07-31)