所在地 : 長野県南佐久郡南牧村野辺山 462-2 (→Mapion)
訪問日 : 2004-07-18, 2004-08-21, 2005-08-20, 2006-08-06, 2007-08-25 ほか数回
URL : http://www.nro.nao.ac.jp/
JR 小海線に小渕沢から乗車し、JR 最高地点を過ぎたあたりで八ヶ岳とは反対側の右車窓へ目をやると、畑と木立の向こうに巨大なパラボラアンテナの姿が見えます。
今や JR 最高地点と並ぶ野辺山の名所、日本最大の電波天文台「国立天文台野辺山宇宙電波観測所 (NRO : Nobeyama Radio Observatory)」ならびに「国立天文台野辺山太陽電波観測所 (Nobeyama Solar Radio Observatory)」です。
「野辺山電波天文台」の通称でも知られる国立天文台野辺山は、東京大学東京天文台 (当時) が 1969 (昭和 44) 年に「野辺山太陽電波観測所」を開設してから 1982 (昭和 57) 年の「野辺山宇宙電波観測所」開設まで、13 年の歳月をかけて建設しました。
大気中の水蒸気に吸収され易い波長 1〜10mm のミリ波帯電波を観測するため、空気の乾燥した標高 1,350m の野辺山高原が選ばれました。都市部から離れ山に囲まれているために電波妨害を受けにくいこと、干渉計設置のための十分な平地が確保できることも決め手となりました。
1982 年の観測開始以来、渦巻銀河 NGC4258 中心部の巨大ブラックホールの発見 (1994 年)、多数の星間分子の発見、太陽系外の原始惑星系の発見など、宇宙の謎に迫る数々の発見成果は世界から高く評価されています。
宇宙電波観測所には、ミリ波観測用としては世界最大の 45m 電波望遠鏡、10m アンテナ 6 基から成るミリ波干渉計が、太陽電波観測所には直径 80cm のアンテナ 84 基がズラリと並んだ電波ヘリオグラフがあり、これら観測装置も世界トップクラスの観測能力を有します。
ミリ波天文学の世界的拠点として、野辺山へは国内外から多くの研究者が訪れます。
国立天文台野辺山では、研究と観測への理解を広める意味もあり、年末年始を除き毎日一般公開されているほか、毎年 8 月には特別公開が催され (2004 年は 8 月 21 日に開催された)、多くの訪問者で賑わいます。
首都圏から比較的近く日帰りも十分可能です。個人的には、野辺山から車で 1 時間程の JAXA 臼田宇宙空間観測所と併せての「巨大パラボラ巡り」を強く推奨します。
無論、特別公開時は講演等のイベントも目白押しとなるので、一日じっくり満喫するのが吉でしょう。
野辺山観測所。ゲートからほぼ一直線に伸びる先に、10m アンテナが複数、更に奥に 45m アンテナが天を仰ぐ姿が。歩き進むうちに、否応無く気分が盛り上がる。
(2004-07-18)
45m 電波望遠鏡。電波望遠鏡としては無論日本最大。
波長の極めて短いミリ波を捕らえるために、凹凸 0.06mm 以下、鏡面全体の理想放物面との誤差 0.09mm という驚異の鏡面精度を有する。
(2004-07-18)
45m 電波望遠鏡が真横に鏡面を見せるとこんな感じ。
ちなみに、アンテナを傾けたとき自重により変形しても新たな放物面を形成するよう、特殊な骨組み構造でディッシュを支えているとのこと。
(2004-08-21)
45m 電波望遠鏡の銘盤。完成当時は東大東京天文台だったので、銘盤にもその名が残る。
巨大パラボラアンテナと言えば、やはり三菱電機製。さすが三菱のパラボラは精度が高いぜっ!(ぉ
(2004-07-18)
10m アンテナ 6 基から成るミリ波干渉計。解説板には 5 素子とあるが、1993 (平成 5) 年に 6 素子目 (写真中央手前、これだけ微妙に形状が違う) が完成している。
6 基の開口合成により、最大で 600m のアンテナと等価の精度を得ることができる。その解像度は最大で 0.0003 度、これまたミリ波天文では世界一。
(2004-08-21)
干渉計素子の移動用レール。軌間 5m 程の超広軌レールが東西 560m、南北 520m に伸びる。筆者は勝手に「東西線」「南北線」と呼んでいる (写真は「東西線」)。
(2004-07-18)
太陽電波観測所に所属する電波ヘリオグラフ。東西 490m、南北 220m の T 字型に配置されている。一部のアンテナは、隣接する信州大学牧場内に置かれている。
(2004-07-18)
太陽電波観測所の強度偏波計。1 〜 80GHz の各周波数で太陽電波の強度および偏波の向きを観測し、太陽フレアの発生メカニズムを探る。左端の、3 基が一つの筐体に取り付けられたものが面白い。
奥側の 4 基は、名古屋大学空電研究所で使用されていたもの。
(2004-08-21)