所在地 : 青森県三沢市
訪問日 : 2002-12-22, 2003-11-02
去る 2002 年 12 月 1 日に東北新幹線が延伸開業した八戸から東北本線に乗り継ぎ、特急列車で 14 分の距離に位置する青森県三沢市。
ここの米軍三沢基地の一角に、極東有数の無線傍受施設・姉沼通信所が存在します。
戦前、北方への爆撃機の基地として建設された三沢飛行場は、敗戦後進駐した米軍によって極東ロシアおよび中国 (恐らくは、北朝鮮も) を監視盗聴する傍受基地へと変貌しました。
三沢の通信傍受施設を運用する部隊は、在日米軍の指揮系統下ではなく米国メリーランド州フォート・ミードの NSA (National Security Agency : 国家安全保障局) の直接指揮下にあると言われています。
アメリカをはじめ 5 ヶ国によって運用されている全世界的通信傍受ネットワーク「エシュロン」との関連も取り沙汰されているところです。
三沢基地の無線傍受アンテナ施設は、姉沼と小川原湖に挟まれた一帯を占有して設置されています。これが "Security Hill" の異名を持つ姉沼通信所で、中でもひときわ目に付く存在なのが、主に短波通信傍受に用いられる、直径 450m、高さ 36m にも及ぶ巨大円形アンテナ、制式名称 AN/FLR-9 (通称「象のオリ」) です。日本では三沢の他、沖縄・読谷村の楚辺通信所にも設置されていました (楚辺通信所の象のオリは 2007 年 6 月に撤去)。
姉沼通信所の場所は、三沢の隣の小川原駅からが比較的近いですが、民間人が中に入ることなど無論できないので、三沢方面へ少し戻って姉沼越しに遠望するのが無難です。
小川原駅を出た傍の、線路と平行して通っている県道八戸野辺地線を三沢方面へ 40 分程 (!) ひたすら歩きます。道中、丘高くなっている箇所からは、「象のオリ」だけでなく、衛星通信傍受用と言われる白いレドームも見え隠れしているのが分かります。
「三沢オートキャンプ場」の標識のある三叉路を左折し、仙台防衛施設局の管理用地の広がる丘陵を更に歩き進むこと約 15分、いい加減歩き疲れた頃に、姉沼の畔に辿り付きます。姉沼の向こうには「象のオリ」が。この先、姉沼から小川原湖畔へと道路は続くので、好みのアングルを探すのも良し。
姉沼越しに見る「象のオリ」。
(2003-11-02)
「象のオリ」が見えるといっても、道路自体はごく普通の一般道路で誰でも通行可能なところ、傍らで監視員が睨みをきかせているわけでもありません。とは言え、なにぶんモノがモノだけに、軽率な行動は控えたほうがよろしいかと (それを言うなら、そもそも興味本位で見物しに来るなと言われそうですが)。ヤジ馬根性で見に行くこと自体を止めるつもりはありませんが、万が一「不審人物」と見なされて職務質問されるような事態となっても、当方は一切関知いたしません。
道中、県道八戸野辺地線は交通量が多い上に路肩がほとんど無いので、歩きの際には十分ご注意あれ。と言うか、素直に三沢か八戸あたりでレンタカーを借りるのが無難かと思われます。
なお、筆者はスケジュールの都合で利用できませんでしたが、小川原駅前には温泉公衆浴場「姉戸川温泉」があります。時間に余裕があれば、歩き疲れた身体を休めるために立ち寄るのも一興。と言うわけで、三沢へ行く際には「銭湯準備」もお忘れなく。
参考文献
- すべては傍受されている - 米国国家安全保障局の正体
- James Bamford, 瀧沢一郎 訳, 角川書店, 2003, ISBN4-04-791442-8
- 通信ネットワーク用語事典 2002-2003 年版
- 池田博昌 監修, 秀和システム編集部 編, 秀和システム, 2002, ISBN4-7980-0289-5
- 取材メモ 2 : 米空軍三沢基地・姉沼通信所
- 井上孝司 , <http://www.kojii.net/works/memo02.html>