探検発見 : KDDI 山口衛星通信センター

所在地 : 山口県山口市仁保中郷字原 123
訪問日 : 2004-03-13, 2004-11-13, 2006-12-09, 2007-10-13, 2009-02-07


太平洋上の静止軌道位置にある通信衛星にアクセスするための地球局施設が多く集うのが茨城県であるのに対し、インド洋上衛星向け地球局が集中するのは、本州最西端の山口県です。
インド洋上の静止衛星を見通せる場所は、日本では山口県が最東端となります (東経 60 度付近のインテルサット衛星の場合)。地球局位置が東寄りだと衛星との仰角が小さくなり、大気や雨雲による電波の減衰が増えるために、衛星〜地上間の通信の観点からは少しでも西寄りの方が有利ではあるのですが、通信需要のある大都市圏との中継回線を確保する関係で本州内に地球局を置くとなると、必然的に山口しか無くなる、というわけです。
この他にも、台風・地震等の自然災害の影響が少ない、電波障害が少ない等の好条件が揃っていることもあり、インド洋上衛星とは関係無いものも含め、茨城とならび多くの地球局施設が山口に設けられるようになりました。

数ある山口の衛星地球局のなかでも最も歴史があり、かつ最大規模のものが、山口市仁保地区にある KDDI 山口衛星通信センターです。
1969 年 5 月、KDD (当時) 山口衛星通信所として開設され、インド洋上のインテルサット衛星を介してヨーロッパ・アフリカ・アジア地域との通信を可能にしました。
茨城衛星通信センターが国際通信における日本の東の玄関口なら、山口衛星通信センターは西の玄関口です。
無論、現在の KDDI は国際通信の独占事業者という訳ではありませんし、通信衛星ばかりが国際通信の手段というご時世でもありませんが、大小 13 基ものパラボラアンテナが並ぶ姿は圧巻で、老舗通信事業者の貫禄を見せつけてくれます。山口のみならず、間違いなく国内最大規模の衛星通信地球局施設です。
また、茨城局のインマルサット設備が廃止された現在では、日本で唯一のインマルサット海岸地球局でもあります。

山口市中心部から国道 9 号線を北上、仁保入口交差点を右折して国道 376 号線を道なりに進んで行くと、KDDI や NAO のロゴの入ったパラボラアンテナが視界に入ってきます。「KDDI 前」バス停のところを左折すると、程なく衛星通信センター正門に辿り着きます。

山口局もかつての茨城局と同様に、守衛所に申し出れば快く見学させてもらえます。先ずは守衛所向かいの展示施設「パラボラ館」から (毎週月曜および年末年始は休館)。
もちろん、実際に稼働しているアンテナ施設に立ち入ることはできませんが、パラボラ館に接する芝地の内までであればお咎めはありません。自由に見学できるエリアから見ることのできるアンテナの多さでは山口の方が上です。

ところで、筆者が以前に茨城局を訪問した際、パンフレットには「2002 年 8 月茨城衛星通信センターと改称」とあり、山口局についても「山口衛星通信センター」と記されてあったのですが、今回山口局で貰ったパンフレットでは「山口衛星通信所」のままでした。正門に掲げられた施設名も「山口衛星通信所」のままで、はたして本当に施設名が改称されたのかどうかよく分かりませんが、KDDI の組織図を見る限り、茨城・山口両局とも「衛星通信センター」の名称で記されています。

2007 (平成 19) 年 3 月 16 日、KDDI は合理化のため茨城衛星通信センターを閉局、インテルサット太平洋衛星向け地球局の役割を山口局へ統合。名実ともに日本最大の衛星通信地球局として、今後更に重要性が増すこととなります。

なお、山口市内には KDDI の他にも、宇宙通信 (現・スカパー JSAT)日本テレコム (現・ソフトバンクテレコム、2008 年をもって閉局)自治体衛星通信機構の衛星地球局があります。KDDI のように気前よく見学させてはくれませんが、衛星通信に関心のある向きであれば、迷惑にならない程度に外からパラボラアンテナを覗いて見るのも良いでしょう。


KDDI 山口衛星通信センター山口衛星通信センター正門。
ちなみに、この右手は仁保小学校の正門である。学校の目の前に絶好の社会科見学スポットがある訳で、山口の子供達は恵まれてますなぁ。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター茨城局と同様、正門の標記は「山口衛星通信所」のまま。施設名が改称されたのかどうか、ハッキリさせてくれ。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター守衛所の向かい側にある「パラボラ館」
衛星通信ばかりでなく、海底ケーブルも含めた通信のしくみや歴史に関する各種資料が展示されている。流石は老舗事業者、広報というものを分かっていらっしゃる。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター敷地内で一番目に付く、32m 電波望遠鏡。もとは 1979 年に建造された第 4 アンテナで、2000 年までインテルサット衛星との通信に使用されていたものが 2001 年 9 月に国立天文台 (NAO) に寄与されたもの。中国地方唯一の電波望遠鏡として、地元・山口大学と共同で宇宙電波観測に用いられている。
右下に見えるのは、パンナムサット (現在はインテルサットに買収) 用 7.6m アンテナ。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター32m 電波望遠鏡の左隣に見える、インテルサット用第 2 アンテナ (34m)。見学可能範囲から少々奥まっていて近くまで寄れないのが惜しいが、山口局で最大のパラボラアンテナのひとつ。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター左から、インマルサット・インド洋衛星用 18m アンテナ、インテルサット用第 3 アンテナ (34m)、インマルサット・太平洋衛星用 18m アンテナ。インド洋向きと太平洋向きのアンテナが背を向けながら同じ場所に集う、山口ならではの光景である。
なお、2 基あるインテルサット用 34m アンテナの第 2・第 3 の別は見学エリア内の解説板からは読み取れないが、パラボラ館内の施設年表から推測した。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター少々小振りながら、稼動中のアンテナの中で見学可能範囲から最も近くまで接近できるのがコレ、インマルサット用 9.2m アンテナ。向きを微調整するモーター音が案外頻繁に聞こえてくるが、いいのかこんなに近付けて。
奥に見えるパラボラは、左がテレビ受信用 9.2m、右がインテルサット用 18m。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター敷地北寄りにある第 3 アンテナは、接近はできないものの敷地外からよく見ることができる。後方にわずかに見えるのはアジアサット用 9.2m アンテナ。
(2004-03-13)

KDDI 山口衛星通信センター敷地外からインマルサット用アンテナを見る。インド洋上衛星を見通せる最東端というだけに、仰角は小さくほとんど横向き。
右奥に見える 32m 電波望遠鏡と比較して、方位角を調整する構造の違いに注目されたし。電波望遠鏡が 360 度任意の方向へ旋回可能であるのに対し、インマルサット用は元からインド洋上に向けることしか考慮されていないためか、方位角調整範囲は「左右に首を振る」程度である。
(2004-03-13)

スカパーJSAT スーパーバード山口ネットワーク管制センターおまけその 1 : 山口市内、国道 9 号線バイパス荻交差点近くにある、スカパー JSAT スーパーバード山口ネットワーク管制センター。数m 〜 10m 程度のパラボラアンテナが 5 基並んでいる。
(2004-03-13)

JT 上山口衛星通信局おまけその 2 : 山口市宮野地区にある、日本テレコム (JT、現・ソフトバンクテレコム) 上山口衛星通信局。写真の 2 基はインテルサット・インド洋衛星にアクセスしているらしく、KDDI と同様はるか地平をなめるような角度で西方を向いている。ディッシュ径は 18m。
なお、同局は 2008 (平成 20) 年末をもって閉局、写真のパラボラも撤去されている。
(2004-03-13)

Lascom 山口管制局おまけその 3 : JT 上山口局と同じく宮野地区にある、自治体衛星通信機構 (Lascom) 山口管制局。全国の自治体および防災機関が共同で通信衛星回線を利用するインフラを整備する目的で設置された団体で、使用衛星はスーパーバード。山口のほか、北海道美唄市に副管制局がある。
5m 程度の小振りなパラボラが 1 基。以前はもう 1 基、7m のパラボラがあったらしいが、筆者訪問時はこの 1 基のみであった。
(2004-03-13)

参考文献

パラボラアンテナ - 山口県
<http://wiki.spc.gr.jp/parabola/?YamaguchiPref>