所在地 : 静岡県浜松市佐久間町
訪問日 : 2004-09-05
明治時代、日本社会に電気が登場するようになったとき、東京電灯 (現・東京電力) はドイツから輸入した 50Hz 仕様の発電機を、大阪電灯 (現・関西電力) はアメリカから輸入した 60Hz 仕様の発電機を導入しました。全国的に一貫した電力政策が採られなかったために、各地の電力会社が個別に電力設備を整備し、結果として電源周波数が各地で異なる事態となってしまいました。
その後、東日本は東京電灯に合わせて 50Hz、西日本は大阪電灯に合わせて 60Hz という形で整理されましたが、国土が 2 種類の電源周波数で分断された状況は変わらず現在に至っています。
電化製品によっては、電源周波数が異なると使用できないものもあるので、周波数の異なる地域へ引っ越す際には注意が必要です。
電源周波数の違いは、電力会社にとっても時に厄介な問題となります。
各電力会社は、電力負荷の変動に応じて広域に電力を融通し合うことがありますが、周波数が異なると当然ながらそのままでは相互融通することができず、周波数変換の必要が生じます。
電力の広域融通のための周波数変換変電施設は、電源開発・佐久間周波数変換所 (静岡県浜松市佐久間町)、東京電力・新信濃変電所 (長野県東筑摩郡朝日村)、中部電力・東清水変電所 (静岡県静岡市) の 3 ヶ所にあります (東清水は、駿河変電所との間の高圧送電線が未完成であるため、現在は仮運用中)。
近年は地球温暖化やヒートアイランド現象により夏場の電力消費量が増加する傾向にあり、特に首都圏ではピーク時の電力供給不足が懸念される事態が時折発生しています。
電力の安定供給のためには重要な周波数変換所ですが、変換能力は佐久間が 30 万 kW、新信濃が 60 万 kW、東清水が 30 万 kW (現在は仮運用のため 10 万kW) と、3 ヶ所を合わせても全国の最大電力の 1% にも満たず、能力不足の感は否めません。とは言え、通常はほとんど使用されない稼働率の低い設備であることも事実で、電力会社も更なる設備投資には二の足を踏んでしまうのが実情です。
電源開発の佐久間周波数変換所は、1965 (昭和 40) 年 10 月に運転を開始しました。大口電力需要家が自前で設ける周波数変換施設 (東海道新幹線の周波数変換変電所が好例) を別にすれば、広域電力融通のための周波数変換所としては国内初のものです。
佐久間といえば 1956 (昭和 31) 年完成の佐久間ダムが有名なところですが、もともと佐久間発電所は50・60Hz 両方の発電能力を有しており、両周波数の送電設備が整備されていたので、周波数変換所の立地としては確かに適当と思われます。
JR 飯田線・中部天竜駅から徒歩約 5 分、天竜川を橋で渡ったところに佐久間周波数変換所はあります。
変電施設というものは傍から見て面白いものでもありませんが、佐久間ダム訪問の際には是非ともセットで、佐久間レールパークがお目当ての向きも話のタネにどうぞ。
中部天竜駅前から天竜川を橋で渡ると、周波数変換所の看板が見えてくる。
(2004-09-05)
佐久間ダムへ通じる道路を少し登ると、施設を見下ろすことができる。
手前の門型の鉄塔に三相交流の送電線 (50・60Hz 各 3 本) が繋がっている。
(2004-09-05)
右側の背の低い門型鉄塔に「50〜」の表記があり、50Hz 用送電線と判る。
(2004-09-05)
左側の背の高い門型鉄塔には、60Hz 用送電線を示す「60〜」の表記が。前掲の「50〜」表記と併せ、周波数変換施設であることを示す数少ない目印と言えよう。
(2004-09-05)