探検発見 : JR東海 綱島周波数変換変電所

所在地 : 神奈川県横浜市港北区綱島東 6 丁目 (→Mapion)
訪問日 : 2004-06-12, 2004-10-23


2004 (平成 16) 年 10 月 1 日に開業 40 周年を迎えた東海道新幹線。
日本が世界に誇る超高速鉄道、その運行を陰で支える類稀な電気施設の存在をご存知でしょうか。

電車が 200km/h 以上もの超高速運転を行うためには、当然それ相応の電力が必要となります。電力は電流と電圧の積で表されるため、大電力を得るためには電流を増やすか電圧を高くする (あるいは、その両方) こととなりますが、架線に流れる電流があまりに大きいと離線時に架線事故を起こす危険が増すため、電流が過大とならないよう電圧を高くする必要に迫られました。
新幹線の計画された昭和 30 年代当時、数千〜数万 V もの高電圧を安定して得るためには交流電化しか選択肢はありませんでした (現在は整流技術の進歩もあり、数十万 V もの直流送電が実用になっている)。このため、新幹線では交流 25,000V 電化が採用されたのですが、ここで問題となるのが、東西での周波数の違いです。

よく知られているように、日本の商用交流電源は、東日本が 50Hz、西日本が 60Hz と、周波数に相違があります。東海道新幹線では、静岡県の富士川がその境界となります。
車両を 50・60Hz の両対応とすることは、車載変圧器が大型化して重量増につながり、高速運転の妨げとなるほか軌道への悪影響も無視できないため、比較的距離の短い 50Hz 区間は地上で周波数変換を行い、全線を 60Hz で統一することが得策と当時は判断されました。
このため、世界的にも珍しい 60,000kVA もの大容量の横軸回転型周波数変換機各 1 基を備えた「周波数変換変電所」が綱島 (神奈川県横浜市港北区) と西相模 (神奈川県南足柄市) の 2 ヶ所に開設されました。
その後、列車本数の増加や 16 両編成化といった負荷の増大に合わせ、綱島・西相模両所へ 2 号機・3 号機を導入、浜松町変電所 (東京都港区) へ新たに周波数変換機 1 基を設置するなど、設備増強が行われています。

綱島周波数変換変電所は、東急東横線綱島駅から徒歩 10 分程のところ、東京電力綱島変電所に隣接して設けられています。
東電から供給された 50Hz 154kV の三相交流は、所内の受電用変圧器で 11kV に降圧されたのち、周波数変換機の同期電動機へ送られます。50Hz 同期電動機は同一回転軸上に直結された 60Hz 同期発電機を駆動します。同期電動機の極数 10 に対し同期発電機の極数を 12 とすることで、60Hz 14kV の交流電力が発生されます。この後、送電用変圧器によって 77kV に昇圧し、ケーブルで各変電所へと送られます。
通常は 3 基のうち 2 基を稼動させ、1 基は予備とする体制を採っています。また、新幹線列車の運行のない深夜は、経済性や騒音防止の観点から運転を休止します。
(前述の数字等は 1994 年当時のもの)

2002 (平成14) 年、品川駅開業 (2003 (平成 15) 年 10 月) により増発余地が生まれることに対応するため、綱島周波数変換変電所に 4 号機が導入されました。
綱島 4 号機は従来の横軸回転型から静止型インバータへと姿を変え、変換効率の向上とメンテナンスの省力化がはかられています。

2006 (平成 18) 年 10 月、JR 東海は新幹線の電源安定供給のため、2009 (平成 21) 年春を目途に 4 番目の周波数変換変電所を沼津に新設することを発表しました。当然ながら、綱島 4 号機と同様の静止型周波数変換機が採用されます。

その内部が公開されているわけではもちろんありませんし、傍目に面白いというものでもありませんが、これが無いと日本の大動脈が機能しない「縁の下の力持ち」であります。興味のある方はどうぞ。


JR東海 綱島周波数変換変電所綱島周波数変換変電所。東電綱島変電所からの 50Hz 三相交流の受電設備が見える。
(2004-06-12)

JR東海 綱島周波数変換変電所正門の「周波数変換変電所」の標記が、施設の特異性を物語る。逆に言うと、この標記が無いとどんな施設なのか傍目には判り辛い。
(2004-06-12)

JR東海 綱島周波数変換変電所正門横のインターホンには「当所は JR 東海の綱島変電所です」の標記が。東電と間違えてやってくる人が後を絶たないと見受けられる (笑)。
(2004-10-23)

JR東海 綱島周波数変換変電所3 号機の収められた建屋と冷却塔。住宅地に隣接するため、高い防音壁で囲まれている。
(2004-10-23)

JR東海 綱島周波数変換変電所4 号機が収められていると思しき建屋。回転式でないため、外から見る限り 3 号機のような大型の冷却装置は見られない。
(2004-10-23)

JR東海 浜松町周波数変換変電所おまけその 1 : 東京都港区の浜松町周波数変換変電所。周波数変換機は 1 基のみと、綱島や西相模と比べるとだいぶ小規模。
ちなみに、「日本国有鉄道 浜松町交流変電所」の標記が残っていた。
(2004-10-23)

JR東海 西相模周波数変換変電所おまけその 2 : 神奈川県南足柄市、伊豆箱根鉄道大雄山線相模沼田駅から徒歩約 20 分、西相模周波数変換変電所 (正門の標記は単に「西相模変電所」)。隣接する東電西相模変電所から受電し、3 基の周波数変換機で変換された 60Hz 三相交流は架空電線で平塚および沼津へと送電される。
よく見ると、建屋壁面の形状と色の微妙な違いから、設備増強に応じて建て増しされた様が伺える。
(2004-10-23)

参考文献

開業 30 周年 新幹線の実力を見る
「鉄道ジャーナル」1994 年 10 月号, 鉄道ジャーナル社, 1994
新幹線の謎と不思議
梅原淳, 東京堂出版, 2002, ISBN4-490-20475-2