探検発見 : 海上保安大学校 海上保安資料館

所在地 : 広島県呉市若葉町 5-1
訪問日 : 2003-09-09
URL : http://www.jcga.ac.jp/


米国の中枢部を同時多発テロが襲った 2001 年、日本においては 2 年前の能登半島沖不審船事件の記憶も覚めやらないこの年の末に、九州南西の東シナ海上で不審船が海上保安庁巡視船と銃撃のうえ沈没するという事件が起こりました。所謂「九州南西海域不審船事案」です。
その後海底から引き揚げられた不審船と遺留品を調査した結果、該船は北朝鮮籍の武装工作船であると断定されました。

引き揚げられた工作船は 2003 年、東京の「船の科学館」で一般公開され、筆者も公開 2 日目に早速見に行ったのですが、もうひとつの当事者である巡視船「あまみ」の被弾した船橋部も見てみたくなりました。
工作船から至近距離で自動小銃の乱射を浴びせられた「あまみ」の船橋部は国土交通省ロビーで展示された後、広島県呉市の海上保安大学校内で保存・展示されています。

海上保安大学校および海上保安資料館への公共交通機関での足は、呉駅前から呉市交通局・天応川尻線の「天応福浦」方面行バスを利用します。天応福浦方面行は駅前ロータリー内バス乗降場には入ってこないので、国道 31 号線側のバス停を利用することになりますが、運行系統の関係上、駅を出て左手のそごう前バス停の方が多少本数が多いのでこちらをお勧め。下車バス停はその名もズバリ「海上保安大学校入口」です。呉駅前からの運賃は 190 JPY 也 (2003 年 9 月現在)。
注意すべきは「峠経由」に乗ること。峠経由でないと、一つ手前の海岸 4 丁目バス停で降りて少々余計に歩く羽目になります。
要は、天応川尻線の「峠経由」に乗れば行先を問わず必ず海保大最寄りバス停を通る、ということ。

バス停から呉駅方面へ 50m 程戻ったところ (呉駅前方面行バス停の前) に、IHI 新宮工場の脇を通る道路への入口があり、この道を 600m 程進むと海保大正門に辿り着きます。道路入口に案内標識もありますし、一本道なので、工場内に立ち入るような奇行でもやらかさない限り迷いようはありません。バス停からは徒歩 10 分程。

海上保安資料館は、1980 年の海上保安庁創設 30 周年記念事業の一環として海保大敷地内に開設されたものです。
入場は無料ですが、一般公開が平日 (9:00 〜 16:00) に限られていたり、解説パネルの表記が「だ・である」調だったりと、どこかお役所臭さが抜け切れません。
展示内容も、多くのものは開設当時から大幅にアップデートされていないように見受けられました。
昨今の不審船・工作船事件で注目を集める海上保安庁だけに、地の利の悪さ (失礼!) はともかくとして、広報施設としての展示内容の更なる充実を期待したいところです。


海上保安資料館への道海保大ならびに海保資料館への案内標識。右手のバス停は呉駅前方面行きの乗り場。天応福浦方面行きバスはこの先 50m 程のところで停まるので、少し逆戻りすべし。
(2003-09-09)

海上保安大学校海上保安大学校正門。
(2003-09-09)

海上保安資料館正門入ってすぐ右手にある、海上保安資料館。呉らしく、赤レンガ色。
向かって右側の、2 階部張り出し下の空間を利用して設けられたと思しき箇所が、巡視船「あまみ」船橋展示室。
(2003-09-09)

海上保安資料館海上保安庁設立当時の庁旗。1948 (昭和 23) 年 5 月 12 日、旧海軍省庁舎屋上に初めて掲揚されたもの。この日付をもって海保の開庁記念日としている。
(2003-09-09)

海上保安資料館現役巡視船艇の模型。
写真中最も手前のものは、ヘリコプター 2 機搭載型巡視船「みずほ」(PLH21)。
(2003-09-09)

海上保安資料館同資料館の現在のところ一番の見もの、巡視船「あまみ」(PM95) の被弾した船橋部。
本船左舷を工作船に接舷したところを狙い撃ちされたため、左舷側に多く弾痕が残る。
使用された火器は、AKS-74 自動小銃、 PK 軽機関銃、ZPU-2 対空機関銃。テロリストや海賊あたりなら AK-47 がポピュラーなところであろうから、工作船ならびにその乗員が正規軍の「特殊部隊」に属する事を窺がわせる。
(2003-09-09)

海上保安資料館同じく「あまみ」の、被弾した各種装備品 (この他にレーダースキャナが有り)。
(2003-09-09)

海上保安資料館2F 展示室は、海保の主要業務である警備救難業務・水路業務・灯台業務の紹介。ただし、海保の華 (?) とも言うべき警備救難業務に関しては、最近のトピックに触れられていなかったりして、内容的にはやや不満。
(2003-09-09)

海上保安資料館水路業務紹介コーナーより、これはごく最近のトピック「日本海呼称問題」に関する展示。
警備救難部と比べて目立たない存在に見られがちな海洋情報部のせめてもの自己主張か? などという穿った見方はさておき、なるほど広報役としての資料館の使われ方もやるところではやってます。
(2003-09-09)

海上保安資料館資料館前の駐車場脇に露天展示されていた、海保の最初にしておそらく最後の潜水調査船「しんかい」。
海洋研究開発機構 (JAMSTEC) の「しんかい 2000」「しんかい 6500」とはもちろん別物。
現在は呉市に譲渡され、2005 (平成 17) 年 4 月にオープンした呉市海事歴史科学館 (大和ミュージアム) に移転のうえ展示されている。
(2003-09-09)

参考文献

海上保安レポート 2003
海上保安庁 編, 2003
九州南西海域における工作船事件の全容について
海上保安庁 , <http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/news/h14/fushinsen/030314/index.html>