探検発見 : NTTドコモ 小夜戸衛星通信所/揚枝方衛星通信所

[小夜戸衛星通信所]
所在地 : 群馬県みどり市東町
訪問日 : 1999-05-03, 2004-04-11, 2006-05-21, 2007-05-20, 2007-11-03, 2008-06-14

[揚枝方衛星通信所]
所在地 : 茨城県北茨城市
訪問日 : 1999-05-03, 2004-04-10, 2005-07-31, 2006-05-27, 2006-11-23, 2007-04-07, 2007-11-23


NTT ドコモは、地上波 PDC のエリア補完、アナログ方式船舶電話の置き換えおよび近海 200 海里までのエリア拡大を目的に、通信衛星 N-STAR を用いた衛星携帯電話サービスを 1996 年 3 月より開始しました。

通信衛星 N-STAR は、NTT 地上網のバックアップや離島向け回線の確保、および前述の移動体向けサービスを目的に NTT グループが投入した大型静止衛星で、a 号機 (東経 132 度) および b 号機 (東経 136 度) が 1995 年から 1996 年にかけて相次いで打ち上げられました。

当初は NTT と NTT ドコモの共同所有、1999 年 7 月の NTT 再編後は NTT 東日本・NTT 西日本・NTT コミュニケーションズ・NTT ドコモの 4 社共同所有で運用されてきましたが、NTT Com の所有分は 2000 年 3 月に、NTT 東西地域会社の所有分は 2002 年 7 月に JSAT (旧・日本サテライトシステムズ、現・スカパー JSAT) へ資産譲渡され、2003 年 8 月を以ってドコモ所有分の N-STAR 資産も JSAT へ譲渡されました。現在、ドコモをはじめ NTT グループ各社は JSAT よりトランスポンダを賃借して衛星サービスを提供する形となっています。

2002 年 7 月 6 日 (日本時間)、ドコモ単独所有の N-STAR c 号機が打ち上げられました。b 号機と同じ東経 136 度の静止軌道上位置に投入され、9 月 14 日より運用開始されています。
また 2006 年 7 月からは、N-STAR a 号機の後継機として JCSAT-5A (ドコモは N-STAR d 号機と呼称) が運用を開始。初代 N-STAR である a、b 号機は、2006〜2007 年にかけて退役しました。

ところで、2001 年の春に、それまでの「衛星移動通信サービス」という捻りも面白味も何も無い名称を改め「ワイドスター」とか言うブランドネームを導入していますが、いまだもってプレスリリースひとつありません。「ポケットベル改めクイックキャスト」の時はちゃんと報道発表があったと言うのに。ブランドネームを制定し、商標登録までして、それがプレスリリースに値しないと仰るのでしょうか? だとすれば、本気で商売やる気があるのか、担当者を小一時間ほど問い詰めてやりたいところです。
ついでに言えば、斯様なサービスブランド名を何故 1996 年のサービス開始当初から導入しなかったのでしょうか。なんと言うか、イリジウムがコケて衛星携帯電話という壮大なニッチ商品への逆風が強くなってから慌てて思い付いたように見えて仕方ないんですが。
いやはや、ドコモ本社の衛星担当の考えてることはよく分かりません。

衛星携帯電話とはいえ、地上の電話網と接続するための地球局は当然存在します。山間部に立地していることや、ドコモ自体があまり大っぴらに公表していない (と言っても、参考文献に記してあるぐらいだから、完全に社外秘というわけでもなかろう) こともあり、世間一般には全くと言っていいほど知られていませんが、群馬県勢多郡東村 (現・みどり市東町) と茨城県北茨城市の 2 ヶ所にあります。衛星を介して地上網と移動端末との通信を中継するほか、自社保有衛星である N-STAR c 号機の管制用地上設備を有しています (衛星管制局自体は、地球局とは別のロケーションにある)。

1999 年 5 月、筆者は「ドコモの知られざる衛星地球局施設」を見てみたいと唐突に思い立って、デジカメ片手にフラフラ訪れて来ました。当時は無論 c 号機の陰も形も無い頃です。その後、c 号機投入、d 号機運用開始による施設の変化をフォローするため、何度か再訪取材を行っています。どマイナーな衛星地球局の変遷を追った、稀有な記録をご覧あれ。

小夜戸衛星通信所

N-STAR a 号機の現用系および b、c 号機の予備系を担当する地球局が、群馬県は渡良瀬川沿いの山中に位置する小夜戸 (さやど) 衛星通信所です。

JR 両毛線桐生駅、もしくは東武桐生線相老駅でわたらせ渓谷鐵道に乗り換え、中野が最寄り駅となります。中野駅下車後、線路を横断し、渡良瀬川を渡った先に、山間部には少々不釣合いにも思える衛星基地局が見えてまいります。なにぶん直径 11m のパラボラアンテナが目印です、見落とすことは無いでしょう。

NTTドコモ小夜戸衛星通信所小夜戸局を局舎側より見る。ちなみに、写真向かって右手奥が中野駅方向となる。
(2007-11-03)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所小夜戸局の看板。もちろん立入禁止。
(2007-11-03)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所1999 年 5 月時点での、小夜戸局アンテナサイト。2 基のパラボラのうち、左側が a 号機現用系アンテナ (直径 11m)、右側が b 号機予備系アンテナ (直径 7.5m)。
ちなみに、現用系アンテナは、衛星のドリフトに追従するための仰角・方位角調整機構を有する (予備系アンテナは仰角・方位角とも固定)。
左手の 2 基の小型パラボラは、自動周波数補正機構用の S バンドアンテナ。背後の鉄塔は、地上中継回線のマイクロ波アンテナ。
(1999-05-03)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所2004 年 4 月時点の小夜戸局アンテナサイト。
S バンド用小型パラボラが右側手前に移設され、空いたマイクロ波鉄塔前スペースに c 号機用パラボラが鎮座している。
(2004-04-11)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所2006 年 5 月時点の小夜戸局。b 号機予備系 7.5m が姿を消した。
(2006-05-21)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所2007 年 5 月時点の小夜戸局。d 号機用 (現用系) の 11m アンテナが新設された。
(2007-05-20)

NTTドコモ小夜戸衛星通信所2007 年 11 月現在の小夜戸局。旧 a 号機現用系 11m が消え、再び 2 基構成に。主要アンテナが 2 基とも代替わりを済ませたため、今後当面は変化ないものと思われる。
(2007-11-03)

揚枝方衛星通信所

N-STAR b、c 号機の現用系と a 号機の予備系を担当する地球局は、茨城県北部の揚枝方 (ようじかた) 衛星通信所です。

筆者が最初に訪れた頃は日立電鉄バスの路線が近くまで運行されていましたが、2002 年 6 月末に廃止されてしまいました。現在は、北茨城市による市内循環バスが後を継いで運行されていますが、土曜・休日には全便運休とのことです。

JR 常磐線大津港駅より富士ヶ丘行バスに乗車、終点下車後さらに山側に進み、途中の三叉路を右折。上り坂を上りきって視界が開けたところで、唐突に眼前にパラボラが現れます。このシチュエーションはなかなかに面白いところ。バス終点から徒歩 10 分程度です。といっても前述のようにバスも利用し難いので、大津港駅からタクシーか、レンタカー利用が現実的でしょうか。

NTTドコモ揚枝方衛星通信所1999 年 5 月、初訪問時の揚枝方局の全景。
(1999-05-03)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所前掲の写真とほぼ同アングルから見た、2004 年 4 月時点の揚枝方局。局舎の左奥にアンテナが 1 基増設されている。
(2004-04-10)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所揚枝方局の看板。むろん立入禁止。
(2007-11-23)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所2004 年 4 月時点の揚枝方局アンテナサイト。右側が b 号機現用系、左側が a 号機予備系。このアングルからは、c 号機用アンテナは局舎の陰に隠れて見えない。
(2004-04-10)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所アンテナサイトを、c 号機用アンテナの見える角度から。
いかにも後から無理矢理増設したらしいのが伺える。斯様な配置ゆえ、小夜戸局のように 3 基を正面から一緒に画に収めるのは至難の業。
(2004-04-10)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所2007 年 4 月時点の揚枝方局。旧 a 号機予備系 7.5m に代わり、d 号機用 (予備系) 11m が新設。
(2007-04-07)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所2007 年 11 月現在の揚枝方局。旧 b 号機現用系 11m が消え、c 号機用アンテナがこのアングルからも僅かに見えるように。
(2007-11-23)

NTTドコモ揚枝方衛星通信所c 号機用アンテナ側から、2 基を同時に見たところ。これまでの増減の経緯を知らないと、2 基の配置が奇異に感じられることだろう。
(2007-11-23)

参考文献

NTT DoCoMo テクニカル・ジャーナル Vol.4 No.2
NTT移動通信網 (現・NTTドコモ) 編, 電気通信協会, 1996
NTT DoCoMo テクニカル・ジャーナル Vol.11 No.1
NTTドコモ 編, 電気通信協会, 2003